よくある疑問・質問 (1): 増殖しているかどうかを判定できますか?

Q: 発現解析(マイクロアレイ解析)で、細胞が増殖しているかどうか、判定できますか?

 

A: マイクロアレイデータだけから、そのサンプルが増殖状態にあるのかどうか判別するのは困難です。「増殖系に影響が出ていること」は分かります。

発現変動遺伝子を DAVID にかけることで、細胞周期 (Cell Cycle) 関連遺伝子が含まれているかどうかのチェックは可能です。しかしながら、こちらでも述べているように、アノテーションの問題から、単純にヒットした遺伝子の「」だけで、結論づけることはできません。(可能性を述べるだけならできます。)

また、DAVID の結果、 Enrichment Score が 1.3 以上あり、有意と判定されたとしても、それは、増殖系の遺伝子が変動していたことを意味するだけであり、細胞数が増えているのか、減っているのかを判別するだけの効果はありません

さらに、増殖系の遺伝子のうち、増加している遺伝子が多い=細胞が増えている減少している遺伝子が多い=細胞が減っているというわけでもありません。Cell Cycle 関連遺伝子といっても、細胞周期停止に関わっている遺伝子が増加すれば、細胞数は増えないでしょうし、その逆もあります。(アノテーションの問題を参照。)

細胞数が増えているかどうかを考慮するには、細胞周期だけではなく、アポトーシスの影響も考慮する必要もあるでしょう。細胞周期の遺伝子以上に、アポトーシス系が活性化されているような状況であれば、細胞数は減ることになるかもしれません。

以上のようなことから、増殖しているかどうか(増えているのか減っているのか)を判定するには、マイクロアレイデータだけではなく、フェノタイプやタンパクの状態などを確認しなければなりません。これはマイクロアレイに限った話ではないと思います。次世代シーケンサーのデータであっても同様の課題を抱えたままです。

これは、マイクロアレイデータが使えないと言っているわけではありません。「増殖状態にあるのに、機能解析の結果、Cell Cycle の遺伝子が数個しかヒットしない」という状況は考えにくいでしょう。細胞数の増減は区別できないとしても、少なくとも、「増殖系に影響が出ている」ということは、マイクロアレイデータから十分わかります。

 

GSEA 操作ガイド (4): 結果の表示と解釈

正しくパラメーターを設定できれば、GSEA を実行後に結果のレポートを確認できます。そのレポートの読み方を紹介します。

1. 実行状況の確認

Run を押した後、ウィンドウ左下の Status には、”Running” と表示されています。Error が出ずに終了すれば、この表示が、 “Success” に変わります。(選択したリストが多くなければ、数分後には終了します。)

GSEAの終了を確認。
GSEAの終了を確認。

2. レポートの表示

Success” の部分をクリックすると、ブラウザが起動し、解析結果のレポートが表示されます。 続きを読む GSEA 操作ガイド (4): 結果の表示と解釈

 

GSEA 操作ガイド (3): パラメーターの設定と実行

データの読み込みができたら、GSEA を実行する際に必要なパラメーターを設定します。GSEAには、設定を変更できる非常に多くのパラメーターがあります。ここでは最低限必要なパラメーターを紹介します。

1. Run Gsea タブの表示

正常にデータを読み込んだら、左側の “Run GSEA” をクリックして、 Run Gsea タブを表示させます。

GSEA をクリック。
“Run GSEA” をクリック。

2. 最低限、設定が必要なパラメーター

Run Gsea タブに、GSEA の実行に必要なパラメーターを設定します。最低限、これらの下記の7項目の設定が必要です。(これらの設定に必要なパラメーターの多さが、GSEAを難しくしている要因の1つかと思います。) 続きを読む GSEA 操作ガイド (3): パラメーターの設定と実行

 

転写因子を抽出(GOを使って)

マイクロアレイ解析の結果、発現が変動した遺伝子のうち、転写因子を抽出するには、どうすればよいでしょうか?

発現変動遺伝子のリストがエクセルの形式であるならば、アノテーションのうち、GOを検索する方法が考えられます。

何を選ぶ?

では、転写因子を抽出するには、どの GO を選べばよいでしょうか?これは意外に難しい問題でもあります。

まず、どのような用語が GO に登録されているか、AmiGOで探してみます。AmiGOを “transcription facotr” で検索すると、223個もの用語がヒットします。

AmiGO を "transcription factor" で検索した結果。
AmiGO を “transcription factor” で検索した結果。

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NF-kB のターゲットとなる遺伝子を調べるには?

マイクロアレイ解析の結果、確認したくなるのは、特定の生物学的な機能を持った遺伝子の変動パターン(増加したか減少したか)だと思います。この特定の機能を持った遺伝子のリストは、GOなどのアノテーションを見れば分かる場合もありますが、そうでない場合もあります。

例えば、転写因子である NF-kB のターゲットとなる遺伝子(制御される遺伝子、下流の遺伝子)は、アノテーションの情報からは知ることができません。このような場合では、インターネット上に公開された情報が役立つことがあります。

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