マイクロアレイ解析結果の論文での表現

前回記事の補足として、マイクロアレイ解析の結果について、論文で記述する際の注意点を解説します。

「マイクロアレイ解析の結果、」に続く文章として、適切なものはどれでしょうか?

  • A: 脂質代謝が活性化されていた。
  • B: 脂質代謝系の遺伝子が活性化された。
  • C: 脂質代謝系の遺伝子発現が増加した。
  • D: 脂質代謝系のいくつかの遺伝子の発現増加が見られた。

まず、 A はよくありません。レビューワーにスペキュレーションと見なされるかもしれません。理由は前回記事にあります。おそらく、「マイクロアレイ以外の他の実験結果を示せ」という注文がつくでしょう。

次に、B もよくありません。間違いではないかもしれませんが、「もう少し詳しく」と指摘されそうです。「脂質代謝系の遺伝子が活性化された可能性がある」ならよいでしょう。

C は問題ありません。無難な表現です。厳密には、脂質代謝系の遺伝子すべてが増加したわけではないでしょうから、後述の D がより無難な表現です。

D は事実のみを伝えているので、全く問題ありません。この事実をどう判断したのかは、著者の意見と明記して、追記しておけばよいでしょう。

 

投稿者:

Atsushi Doi

株式会社セルイノベーター、主任研究員。理学博士。山口大学大学院理工学研究科修了。東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターの特任助手を経て、株式会社GNIに主任研究員として勤務。その後、株式会社セルイノベーターの立ち上げに参加し、現在に至る。専門は、バイオインフォマティクス、おもにシステムバイオロジー。

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