マイクロアレイデータの構成
以前の投稿で述べたように、マイクロアレイデータの表示方法には、下記のようなものがあります。
- テーブル形式で表示(エクセル)
- ヒストグラム
- ボックスプロット
- 散布図
- MAプロット
まず、エクセルで開いてみましょう(参考)。マイクロアレイデータは、主に下記の項目から構成されています。(Agilent 社のマイクロアレイを例として用いています。)
- ProbeName (ProbeID): マイクロアレイ上のプローブのIDです。重複しません。例:A_23_P26810, A_33_P3315764 など。
- GeneSymbol: プローブのコードする遺伝子(以下、単に遺伝子)の公式な略称 (Official Gene Symbol) です。例:p53 の場合は、TP53 が GeneSymbol です。他の遺伝子と重複しないように考慮された略称です。
- Description: 遺伝子の機能などの説明文です。例:Homo sapiens tumor protein p53 (TP53), transcript variant 1, mRNA
- サンプル名(シグナル値): サンプル名で示された列に、シグナル値を表示することが多いです。例:WT, KO など。任意の名称です。
- フラグ:Absent (A), Marginal (M), Present (P) のフラグです。そのプローブによって、対象の遺伝子が検出できたかどうか判定したものです。コールとも呼ばれます。(メーカーによっては、フラグがない場合もあります。)
- GO: 遺伝子に付けられた Gene Ontology (GO) の用語です。複数の用語を羅列することで、遺伝子の機能を表現します。例:GO:0000060(protein import into nucleus, translocation)|GO:0000075(cell cycle checkpoint) など。
- EntrezGeneID (EntrezID): 遺伝子の NCBI における ID です。例:7157
- その他:GenbankAccession, EnsemblID など、その他のデータベースにおける遺伝子の ID があります。
マイクロアレイデータは、1行に1プローブの情報が記録されています。これが、プローブの数だけ、縦に並んだ構造となっています。例えば、4万プローブを搭載したマイクロアレイの結果は、4万行のデータとなります。1行目にヘッダーと呼ばれる項目名の行があります。なお、ヘッダーより前の行に各種のパラメーターや情報が記載されている場合があります。列の並び(横の並び)は、自由なため、上記の項目の順に並んでいるとは限りません。また、行の並びも特に決まった順序がありません。ProbeID の順や、GeneSymbol の順(アルファベット順)、ratio の大きい順などの順で並べ替えられて(ソートされて)いることがあります。
このうち、マイクロアレイデータの解析において、最低限必要なのは、「ProbeID」、「シグナル値」の2つの項目です。これ以外の情報はすべて、いわゆる、「アノテーション」と呼ばれる情報です。ProbeIDさえあれば、それに関連づけされた(annotateされた)アノテーションは、すべてデータベースから取得可能です。また、ヘッダーより上の情報も通常、解析に用いることはありません。
アノテーションの情報が含まれていると、難しそうに見えますが、マイクロアレイ解析に用いる純粋なデータは、行数が多いものの、数字が並んでいるだけの単純な構造となっています。
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