クラスタリング結果の誤解しやすい部分

クラスタリングを解釈する際に、よく誤解しやすい部分があります。クラスタリングの結果というものは、それほど絶対的なものではありません。

クラスタリングの結果は、どのアルゴリズム(hierarchical, k-means, SOM など)を用いてクラスタリングするかで多少異なりますし、同じアルゴリズムを用いたとしても、パラメーターの設定によっても若干変化します。

また、クラスタリングするときに、全遺伝子を用いるか、変動している遺伝子だけを用いるかでも変わります。

サンプル間の距離の計算方法による違い(パラメーターの違い)

サンプル方向にクラスタリングを行い、似ている順位のツリーを書くためには、各サンプル間の距離を求めることになります。このサンプル間の距離を求める方法は、いくつかあります。例えば、単純に引き算して差を取るだけの場合や、2乗してから差を取る場合、相関係数を用いる場合などです。

MeV では、 Distance Metric Selection の部分で、この距離を求める手法を選択することになります。

距離を求める方法の選択。
距離を求める方法の選択。

このサンプル間の距離の求め方によって、最終的な結果のツリーの分類は多少異なります。解析例1の全遺伝子(5万プローブ)をサンプル方向のみでクラスタリングした結果を示します。

Euclidian Distance を選択してクラスタリングした結果。
Euclidian Distance を選択してクラスタリングした結果。

距離を求める手法に Euclidian Distance を選択した場合、control1 だけ外れて(似ていないように)見えます。

Pearson Correlation を選択してクラスタリングした結果。
Pearson Correlation を選択してクラスタリングした結果。

相関係数(Pearson Correlation)を用いて、クラスタリングした場合、control1だけ外れているようには見えません。一般的には、この相関係数を用いることが多いと思います。

クラスタリングに用いる遺伝子セットによる違い

上述の全遺伝子を用いてクラスタリングした結果に対して、変動している遺伝子だけをクラスタリングした結果を示します。 全遺伝子を対象とした場合と異なり、 sample2 と sample3 が近いように見えています。

いずれかの比較で変動していた遺伝子を用いてクラスタリングした結果。
いずれかの比較で変動していた遺伝子を用いてクラスタリングした結果。

このようにクラスタリングの結果は、必ずしも、絶対的なものではありません。よく論文で図示されていますが、あくまで1例であり、あるパターンに分かれる可能性を示したものにすぎません。(仮説の証明手段ではありません。)

特に全遺伝子でクラスタリングした場合、「sample1 と一番近いのは、 sample2 と sample3 のどちらか?」というような、結果の細部にあまりこだわらないほうがよいでしょう。前述のような計算方法の違いで多少前後する可能性があります。ある意味、当然のことなので、これらの結果に一喜一憂する必要はありません。

(その時、用いたデータセットとパラメーターを使えば、とりあえず、あるパターンに分かれて見えるという程度に理解した方が良いです。結果の解釈には生物学的な裏付けが求められます。)

 

投稿者:

Atsushi Doi

株式会社セルイノベーター 取締役、研究開発部部長。理学博士。山口大学大学院理工学研究科修了。東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターの特任助手を経て、株式会社GNIに主任研究員として勤務。その後、株式会社セルイノベーターの立ち上げに参加し、現在に至る。専門は、バイオインフォマティクス、おもにシステムバイオロジー。

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