Gene Ontology (GO) の階層構造

GO の階層構造

整理するために階層構造になっています。用語と用語に親子関係があるとも言えます。例えば、「細胞」の中に「細胞内領域」があり、「細胞内領域」の中に「核」があり、「核」の中に「染色体」があるといった具合です。

これらの用語の階層構造は、 AmiGO の Tree Browser で見ることができます。

GO の Tree Browser 表示。

階層構造の上位の用語ほど、あいまいな用語になっています。また、下位のものほど、より意味の限定された用語になっています。用語に親子関係があると何が便利かというと、階層構造をたどることで、あいまいな用語でまとめて検索ができる点です。

例えば、アポトーシス促進 (GO:0043065 positive regulation of apoptotic process) と、アポトーシス抑制 (GO:0043066 negative regulation of apoptotic process) は、その共通の親であるアポトーシス作用 (GO:0006915 apoptotic process) という用語でまとめて検索できます。

GOの階層構造は、Directed acyclic graph (DAG) という特殊な階層構造で、親を複数持つことができます。しかし、マイクロアレイデータのアノテーションを扱う上で、特に意識する必要はないと思います。

 

Gene Ontology (GO) の分類

Gene Ontology (GO) に登録されている用語は、大きく下記の3種類にまず分類されています。

  • biological process
  • cellular component
  • molecular function

biological process

「生物学的機能」と訳されることが多いですが、分かりにくいかもしれません。例としては、アポトーシス (GO:0006915 : apoptotic process) や、細胞周期 (GO:0007049 : cell cycle) など、主に細胞内で起こるイベントが登録されています。

cellular component

細胞膜 (GO:0044425 : membrane part)、核 (GO:0005634 : nucleus)、 染色体 (GO:0005694 : chromosome) といった細胞を構成する名称が登録されています。

molecular function

MAPキナーゼ活性 (GO:0004707 : MAP kinase activity) など、分子の機能を表す用語が登録されています。biological process との区分が分かりにくいかもしれません。

 

通常、これらの区分を意識する必要はないと思います。なお、教科書や論文で使用されている用語が全てGOに登録されているとは限りません。特定の用語が GO に登録されているかどうか確認する場合は、 AmiGO で検索を行います。

 

Gene Ontology (GO) とアノテーション

Gene Ontology (GO)

オントロジー[1]とは、もともとは、工学や情報科学の分野で使用されていた考え方です。このオントロジーを使って、生物学的な言葉(単語、用語)を整理したものが Gene Ontology (GO) です。

論文などで、「GO」というと、時々、遺伝子の機能を説明するデータベースのように扱われていることもありますが、あくまで「用語集」であると理解しておいた方がよいでしょう。

GOとアノテーション

確かに、GO を使ったデータベースとして、 AmiGO などがあります。これは、GOに含まれる特定のターム(用語)に対して、それをアノテーションに持つ遺伝子を逆引きできるようにしたものです。果物を例に考えると、「赤」という用語でデータベースを検索すると、「赤」をアノテーションに持っていることが登録されている「りんご」や「いちご」が表示されるというイメージです。

アノテーションのイメージ
アノテーションのイメージ

しかし、特定の遺伝子に GO を割り当てる(関連づける)作業を AmiGO が行っているわけではありません。その作業は、MGIなどの各コンソーシアムで行われています。上記の例でいうと、「りんご」に「赤」や「丸」、「甘」、「酸」などの用語を関連づける作業(=アノテーション)となります。このとき、各自が自由な用語を使ってアノテーションを行うと、後々、整理に困ります。そこで、あらかじめ使用できる用語を限定しておき、その限定された用語(用語集)を使って、アノテーションを行うようになったのです。遺伝子にアノテーションする場合に用いる用語集が、「GO」というわけです。

[1] http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/ontology.html